爪切り /服部 剛
 
ふいに 
痒(かゆ)くなった腕をかいたら 
思いのほか 
しろい爪は伸びていた 

( 窓の外には風が吹き 
( 緑の木々が  
( 夢を囁(ささや)く声がする 

はたはた捲(めく)れる日めくりも 
いつのまにやら五月(さつき)の終わり 

少しあわてて 
引き出しを開け 
わたしは ぱちり と 
爪を切る 




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