実/アンテ
 

男は毎朝はやく目をさまして
裏山の頂上まで登っては
一本だけ生えている樹の枝から実をひとつつんで
かわりに前の日につんだ実の種をくくりつけて
陽がすっかりしずむころに家に帰り着いた
実をかじってお腹がふくれると
男は布団にもぐり込んで死んだように眠った
次の日 山へ登ると
種は実に変わっているので
実の数はいつも同じだった
まれに旅人が一夜の宿をもとめて訪ねてくると
男は実をふるまい
旅人たちはそのおいしさにたいそう驚き
ひとつしかないことを知ると残念がった
ある時 男の家に立ち寄った女は
男の家に居ついて
毎日 男が持ちかえった実を食べた
そのうちひとつでは
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