端末/月夜野
 
 反転された文字列から入口を探す
 隠された仮想領域のことばを拾いに
 ほの白い闇に明滅する極小級数の記号は
 ところどころ渦を巻いてわたしを惑わせる
 黒色星雲の配置にならい なぞるカーソル
 の上に立ち現れる闇

 変換されるものと されないものの間で
 蠢いている見えざる手の記憶
 投影された形をさぐる端末の上に
 おぼろげに凝固していく死人の輪郭
 蒼白の顔面に針を突きたて
 開閉動作を不規則に繰り返しながら
 真夜中の回路をしずしずと進んでいく

 見えないことと混乱はつがいのように機能し
 憂いが空間に結ばれて
 彼らの影がむなしく交差する
 異なる心と性の社交場で芽生える愛
 ときに紡がれては距離を一瞬で跨ぎ越し
 抒情はたおやかに語り継がれる

 増設された魂のメモリに
 窓の外 しめやかに雨は降り注ぎ
 深々と更けていく夜のしじまに
 端末は唸りを上げて
 幻を活写する
   
     

戻る   Point(6)