私たちの欠落(夏の日の)/藤丘 香子
 

声にして認めるべきだろうか

私の喉は閉じたままで
幾つかの小さな空気孔が
今日一日分の赤血球を分離させて行く
白い雨は私たちの昼を浸食し
夏の
ぬるい海へ流れる

月の隠れた夜にあなたと私は
幾つかのガス灯を数え
カバンの中の折り畳み傘をひろげて唄を歌う

朝と夏の雨は混ざらない
私たちの姿は少しも奇妙ではなく
暗闇では慈愛に満ちている

次第に私はとても狡くなり
何もかもを忘れている素振りで
浅く眠りながら
眼の奥で望んでいる夢を一つ見ている






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