鉄塔を登る幽霊/錯春
 
れている
   日に焼けたコンクリートに しっかりと影を落とし
   君の手は温かいね
   まるで焼けて溶けてくっついてしまいそうだね
   まるでずっと死んでいるみたいだね 私達
   待ってたよほんとだよ
   君の声が聴こえやしないか
   ちょっと欹ててみただけ   

   鉄塔を登っていく 幽霊は清潔な瞳をしている
   
   一定の高さまでになると そこでとまる
   鉄塔を登る幽霊だけが
   それらをみることが つかむことができる
   鉄塔を登る幽霊は 慈しむ視線でそれらを撫でる
   鉄塔を登る幽霊は 優しいさわりかたをする
   

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