桜吹雪 /服部 剛
 
 日曜の午後 
 鎌倉の喫茶店で 
 「 詩人の肖像 」 
 という本を読んでいた 

 店内の天井から 
 ぴったりと静止した 
 サーカスのブランコのように 
 ぶら下がる 
 黒い三角スピーカーの
 内側に広がる闇夜


ピアノに向かう在りし日のショパン
鍵盤の上に指を踊らせ 
唸る波音の旋律

 1835年のパリから 
 2007年の鎌倉へ 


   * 


 手にした本は
 開いたまま
 第3章 


{引用=遠い過日の鎌倉の寺 
境内に舞う 
桜吹雪の内側に 
垣間(かいま)見る 
ふたりの面影 


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