彼女/おるふぇ
彼女が悲しい嘘をつく前に
どうかあの紅色ルージュを塗った唇を
塞いであげて
もう彼女の恋は
海の一番深い場所まで沈み
眩しい眩しい愛が届くのを待っているだけ
「優しさなんて…」
彼女がそんな台詞を吐く前に
もう一度心を
取り戻してあげて
まだ出逢う前から
不幸を殺してしまう前から
うなじが唇の熱を感じる前から
優しさと残酷さが混じる前から
まだ悲しみという名前のつく前から
彼女は幸福というものが
わからずにいた
誰もわからずにいたから
誰も教えてやれないから
人々の傷痕は
産まれた時から
暗い沈黙の部屋に閉鎖されている
風に翻す
タータンチェックのスカートは
彼女のお気に入りらしく
どんな時でもひらひらと
仕草や動作を演出している
季節は過ぎる
今日もいつものスカート穿いて
きっと彼女は優しい表情を湛えて
空を眺めているでしょう
誰も笑ってくれないなら
僕が泣いてあげるからね
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