古びた部屋 /服部 剛
 
個室のテレビで 
モノクロの映画を見ていた 

画面に映る
その古びた部屋には 
一台のストーブがあり 
上に乗せた薬缶(やかん)の口は 
いつまでも湯気を昇らせていた 

無人の椅子と 
木目の机の上に 
置かれた一冊の本は 
頁(ぺーじ)の捲(めく)れたまま 

時間(とき)の止まった部屋に 
秒針の音(ね)が響いている 

ストーブの 
窓の内 
炎が踊る
暖かい部屋 

テレビ画面に
片足を踏み入れ 
吸い込まれたわたし 

いつのまに 
自らがストーブそのものとなり 

目の前にしゃがみ 
かじかむ両手を暖める 
誰かのことを 
待っていた 




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