「 贈りもの 」 /服部 剛
日中はデイサービスに集まり
賑わっていたお年寄りも
それぞれの家で眠りにつく頃
明かりの消えた広い部屋には
残って日誌を書くぼくひとり
静まり返った夜の老人ホーム
天井下に取り付けられた
スピーカーから静かに響く
フォークシンガーの弾き語り
「 いくつもの橋を渡ってきた
深くに静かに眠る
遠い昔の唄が聞こえる 」
さっきまで隣に座っていた上司は
持ってきたCDの歌詩カードを開き
一篇の詩を口ずさんでいった
「 生き急ぐ人の流れの中で
俺は俺
こだわりは捨てないさ
それで
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