父のこと(やすりをもつ)/蔦谷たつや
 
帰る。

父の元へ帰る。

いや―
父は、いない。

だけども、死んでなんかはいない、
らしい。

(父の大きな肩を見て、育たなかった。)

(父との思い出、あれはもう、小学生の頃か。)

(父は、僕や二人の弟や、母が嫌いだ。)

(父は、無論、子供に好かれていない。自業自得である。)

帰れない。
父の元へ帰れない。

無論、父は、いない。


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