「その昔に消えた城」/猫のひたい撫でるたま子
消しているのか、なくなってしまったのか
あるけど見えない振りをするのか
あとからやってくるのは哀しく虚しい昔の私
晴れた日にもあの日の残像が浮かぶよ
ドアを開けた瞬間には全てを忘れて昼間に向かう
何がほしいから待っているのか、そんなことは忘れてしまった
力持ちの見た夢
裕福な家庭の尖った机
ベンチの上には木の葉が遊ぶ
暗い顔には揺り籠を
こんがらがった少女の湿った髪の毛は切るに限る
揺られ揺られてそこに留まる私の上には、今にも落っこちてきそうな
深いみずうみが浮かんでいる
私が走っていた、それは白昼夢だった
澄んだ湖畔の空気を吸って生き返りたい
不安定で柔らかな生き物を草原に放してあげよう
私が見つけて背負ったのだ
背中に残るぬくもりは、いつか消えてしまうだろう
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