アナザーストーリー/山中 烏流
この街の何処かで
ステロイドの人形が
冷えた歌を奏でる時
私はきっと
あの、行きつけのカフェで
モカカプチーノを
ゆったりと
啜っている
帰宅途中の少女が
出かかった電車を
猛ダッシュで追い掛けて
ギリギリ乗れた、その時
私は多分
口笛を吹きながら
見知らぬ人と
会釈を
交わしている
もしかしたら
空から覗いた目玉に
見とれてしまっている、かも
しれないけど
それはまた
別のお話であって
それはそう
死んだ筈のあの野良猫が
生き返った時であって
今では無いから
気にしないで欲しい
[次のページ]
戻る 編 削 Point(9)