にじのみさきにて/さち
と ゆっくりと
はんたいがわの空には
銀色のまんげつがのぼりだす
すこしずつ
熱をさますように
たくさんの使えるものがあり
使いたいものがあり
欲しいものがありすぎて
見えなくなっていた
夜は暗いということ
炎は明るくあたたかいということ
人は優しいということ
分けあえることは幸せなんだということ
闇に包まれた山あいの草地には
まだ今日を惜しむ人たちが
焚き火をかこんでいる
それは優しい光景で
ありがとうと言いたくなる
火がこんなにうれしいものとは知らず
闇がこんなに不安なものとも知らず
一人はどれほど頼りないことか
気付かずにいたから
あり
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