椿/見崎 光
 
セピアを 風がゆく
幾月を旅して なおも
色褪せることない時空運花


幼少の記憶に飛ぶ しゃぼん玉
数えていく思い出を
あの頃の僕らは知らず知らず
陽光に捧げて過ごした
経てゆく年の傍らで
パチンと弾けた しゃぼんがひとつ
忘れて
失って
消えていく…


風は 時を流れ
どこか哀しげに
しゃぼんを乗せた

変わっていくものは
僕ら と 景色
輝きを映し続けた瞳でさえも
荒んでゆく



公園の片隅で
子どもらの声に揺れる
しゃぼん玉を眺めていたら
浮かんできたよ

とうに朽ち果てたはずの記憶に咲く
大輪の真っ赤な椿を




風が優しく
頭を撫でた…






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