産声/おるふぇ
 
捕まえた蝶々を逃がしてやる
ガラクタの中から見つけ出した
君のような美しさを見る

近づいたね
もう戻れないのに
知らないよね
こんな言葉の意味

見苦しいばかりの詩を
不器用な腕で書き上げたら
食い縛っていた歯の強さ
少しだけ緩めてみた

まだ生きていたいんだね
これだけの無意味さを
目の当たりにしても

どこかで信じている
産まれたことの大切さ

赤ちゃんの泣く声の
生命力の逞しさに
過去の自分が
恥ずかしくなる

捕まえたゴキブリを逃がしてやる
ガラクタの中で見つけ出した
聖母のような美しさを見る

それでも死にたくないんだね
どんなに闇に慣れたって
光や愛を知ったら
それを望むのだから

神々しい泣き声が聞こえる
さっき産まれた赤ちゃんが
まだ生きたことのない世界で
精一杯の何か
表現している

昨日までの僕
どうかしていたみたい
嘘ばかりの詩に埋め尽されたノートを
しっかり両手で抱きしめた
新しい言葉で抱きしめた


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