五行目/山中 烏流
 
ある筈のない
五行目をなぞりながら
レコードは音を紡ぎ続ける
 
私、と呼ばれる生き物は
禁断の実をかじりつつ
その音に
聞き入っている
 
 
ある筈のない
存在しない、五行目から
流れ出す讃美歌は
 
神を讃えるのか。
それとも
命を讃えるのか。
 
まだ分からないので
私、以下略は
禁断の実を、
 
 
存在しない行からの
在りもしないものを讃える
その、音は
 
全てを魅力しつつ
全てを無視し続ける
 
それはまさに
この生き物にとっての、神の。
 
 
存在、そのもので、あり
 
 
ぷつん、と
小さく音をたてて
途切れてしまう前
 
刹那の数秒に
止めなくてはならないこと
 
既に、
認識はしている
 
 
実行は出来ないまま
 
また
五行目を繰り返して
 
抜け出せず
かじり
 
 
知識を貪り、溺れ
 
何も
知らぬまま、また。
 
 
流れ出す。
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