花に、雨/弓束
 
で、後ろから見た少女が佳代なのかを問うたらしい。何かしらの用事があったわけではないので、ご機嫌斜めな彼女の声に少しだけ戸惑う。
 少しの間を置き、サトは右ポケットに手を突っ込み、ごそごそとその中を探った。耳障りな音は何ひとつ立たないのだが、彼女にはその間がとてつもなく鬱陶しく感じられていた。
 沈黙の隙間を潜り抜け、サトが言葉を発する。
「ラムネ、食べる?」
「折角だけど、いらない」
 彼女はどうでもいいといったように、すぐさま無愛想な語気でそう返す。声を掛けておいて、いきなりラムネだなんて。彼女はそのことに無償に苛々していた。
 サトは残念そうに軽く俯き、ポケットから出したラムネの容
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