春と夢を描くはなし/soft_machine
はじめて春の木漏れ日をデッサンする人は
黒いスポーツキャップをかぶっている
背骨のひとつひとつが明瞭で
白い服をさらさらいわせ
にぎやかな空白に
筆をさしこむ
そしてパレットの虹は無限の混色で
やわらかい床をならし
ぬれた壁をかさね
あまい蕾をゆるめ
影をたたえると
与えられた人間たちは
黙々と草を刈り
屋根を掲げ
どこまでも馬を走らせられるが
火薬にも魅せられる
天井の継ぎ目に足を吸われた
やもりの瞳にマゼンタがなやみ
十字星が邪魔する秘密のおっとせい
醒めない縛りに叫びあげるのは
空をただよう手負いのヨットと
重心のずれ
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