「 空の雲 」 /服部 剛
空(から)になった財布の底から
しわくちゃになった
3年前のレシートが出てきた
四隅をひっぱり広げると
すっかり文字は薄れていた
旅先で出逢ったあのひとと
語り合った喫茶店のレシートを
手にするひと時
もう会わなくなって久しいあのひとは
今頃どうしていることか・・・
( 窓の空 とまってみえる 真綿雲 )
先ほどコンビニでお金を下ろした僕は
春に上京したひとと初めて出逢い
新しい美術館で
一枚の絵を見るだろう
リュックのなかから
桜の絵が載った
美術展のビラを取り出す
百年前の画家に描かれた桜の木
この後待ち合わせ
一枚の絵の前に並んだ僕等にみつめられ
無数の花びら
風に散らされ
舞うだろう
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