写真うつりも気になるのだ/若原光彦
書いてみたのだ
へのへのもへじを
思い出せなくなって
目を閉じ黙想してみたがどうにも曖昧だったので
チラシをひっかきまわし裏が白いのを見つけて
そそくさと書いてみたのだ
しかしおかしいのだ
女の子になってしまったのだ
これは何かの間違いだともう一度
すると今度はふたこぶラクダになってしまったのだ
いかなることかと見つめていたが
ラクダは何も答えない
ああそうかきっと紙が悪いのだと
すずりを出し墨をすって半紙に起筆してみると
今度は毛をむしられたペンギンになってしまった
これにはさすがに取り乱した
自分がへのへのもへじひとつ書けない奴だったとは
こんな愚か者が運転免
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