椛の木陰 /服部 剛
わたしはいつも、つつまれている。
目の前に広がる空を
覆い尽くすほどの
風に揺られる椛(もみじ)のような
数え切れない、掌(てのひら)に。
その手の一つは、親であり
その手の一つは、友であり
その手の一つは、忘れた誰か
わたしはいつも、憩うている。
遥か昔からゆるぎない姿で立つ
大きな椛の木の幹に
腰を下ろし
数え切れない掌の
風に揺られる隙間の空は
涙の日には、陽だまりを。
ほほえむ日には、雨水を。
疲れたわたしに、そそいでくれる。
わたしはいつも、観(み)られている。
大きな椛の木の下で
数え
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