畑のにおい /服部 剛
 


一日の仕事を終え 
帰りの道を歩くにつれて 
胃が渋り始めた 

 げっぷ 

体内から 
湧き上がる 
あの田舎の村の 
馬糞のにおい 

( 人の姿の醜(みにく)さは 
( いつも自らの内に 
( 腐れていた  

夜空に冴えた満月の 
夜道を家へふらふら歩く 

( 咳込んでいたぼくを見て
( 慌てて窓を閉めてくれた
( 同僚が 
( 「 大丈夫? 」 
( と瞳をひろげて訊(たず)ねてくれた 
( あの心ばかりが美しい 

肌着を捲(めく)った掌(てのひら)で、
しぼんだ腹を、暖める。 

( 今日はまことに、よい日であった・・・ ) 







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