畑のにおい /服部 剛
 
お得意さんの取引先から 
オフィスへ戻る車内

助手席の窓外は 
穏やかな田舎(いなか)の村と 
夕焼け空の陽の下に 
広がる畑 

窓を開けた隙間から 
入る風に 
前髪はくすぐられ 

( 今日はよい日であった・・・ ) 

と浸(ひた)っていると 
窓の隙間から 
馬糞のにおいが 
鼻腔に吸い込まれ 
思わず

 ごほっ ごほっ 

と咳込んだ 

同僚の運転手は 
慌ててボタンを押し 
車の窓を閉めてくれたが 
田舎の道を通りすぎても 
オフィスに戻った後も 
何故か 
そのにおいは消えなかった 

  * 

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