出棺の日/服部 剛
 
畳の部屋に座る祖母が 
親父と叔母を目の前に座らせ 
「もしも私が世を去った後も
 互いに仲良くしなさい  」       
と静かに語っていた頃 

仕事帰りで疲れたぼくは 
霧雨の降る駅前広場の壁に凭れ
行き交う人波の向こうで
ギターを抱く人が弾き語る
「故郷の唄」を聞いていた 

終電で家に帰り 
重い腰をソファーに下ろしたまま
横たわり夢に落ちた 

目が覚めて
窓の外を見ると 
霊柩車が停まっていた 

向かいの家の初老の婦人が眠る棺桶は 
開かれた金の扉の中へ 
遺族達の手で運ばれる 

ソファーから立ち上がったぼくと 
湯のみをテーブ
[次のページ]
戻る   Point(11)