出棺の日/服部 剛
畳の部屋に座る祖母が
親父と叔母を目の前に座らせ
「もしも私が世を去った後も
互いに仲良くしなさい 」
と静かに語っていた頃
仕事帰りで疲れたぼくは
霧雨の降る駅前広場の壁に凭れ
行き交う人波の向こうで
ギターを抱く人が弾き語る
「故郷の唄」を聞いていた
終電で家に帰り
重い腰をソファーに下ろしたまま
横たわり夢に落ちた
目が覚めて
窓の外を見ると
霊柩車が停まっていた
向かいの家の初老の婦人が眠る棺桶は
開かれた金の扉の中へ
遺族達の手で運ばれる
ソファーから立ち上がったぼくと
湯のみをテーブ
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