最果の春/soft_machine
 
 最果で
 今年最後のさくらが咲いている


あの日、工場の辺りにはやっぱり同じような工場がたくさんあってね、その中ひとつの敷地に桜の大木が並んである。
バスも届かないくらい、おおきな桜だ。
樹によっては、もう八分咲きだった。

一直線にならんだ桜がかいなを道にかざしている下、自転車漕ぎながら見上げると、空は花より明るいデッサンをしている。
昨日は柔らかい、ミルクの油つぶみたいな青空で思わず手放し運転した。
今日は濡れたタオルのようなすいこむ雲から、堪えきれなかった雨もすこし降ってきて、ちょっとたばこを吸ってみた。
菜の花の蜜が溶け出している。
密な夢を己の黄色に糾して、諦
[次のページ]
戻る   Point(23)