雨の犬/藤丘 香子
 
雨は、よく響き
雨音が私を象りながら落下していく

壁一重を隔てた対流が窓で跳ね返り
透き間を探し
感覚の落差が居場所を求め
混じり合い
呼吸し
一枚の葉が露を抱いている

( 朝陽に混じっていくための渇望
繰り返す過程に
その過程に )

対話する
抱擁の静けさ

( 開かれる雨の先の、
打ち続ける音の向こうの、
雨は、雨のままに
虹は、虹のままに )

雨がうまれるということ
太陽は生きているということ
名を望まない素粒子があるということ
虹が架かるということ

雨の犬
いま見ているものが既に過去だという事を
君は知っているのかもしれない

共にある君の
小さな鼻先を翳める雫は柔らかく
細くなった雨は
まもなく止むだろう

君は、
君はとても上手に眠る





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