デッサン/
松本 涼
暖かな夕焼けを背負って
私は昨日を歩いている
土手の草陰に置き去りのボールと
空に絡まる電線
川の水は流れているようにも
流れていないようにも見える
背中を温める夕焼けが
実は本当の夕焼けではないことも
もう知っている
暖かで本物そっくりの夕焼けを背負ったまま
私は今日を歩き始める
土手を転がるボールと
風になびく電線
川のほとりで揺れる小船から
飛び立つ一羽の鳥
それらもみな
ただ哀しみの素描
君を想う時の
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