【短:小説】深夜の電話/なかがわひろか
転換に君に電話を掛けた。夜遅くにすまなかったね。」
まったくだ。それにおそらく彼は人違いをしている。何度も言うようだけど、僕は決して彼の言うような熱心な読者なんかじゃない。
「今度の話は君が主人公なんだ。どうしても君の話を書きたくてね。」彼は続けた。
「君の人生はそのまま言葉で描写しても十分に小説的だと言えるよ。本当に素晴らしい。僕は君のような読者、いや、もう君はある意味僕の親友とも言えるだろう。そんな友を持てたことを本当に幸福に思うよ。」
僕はそろそろ自分の身の内を明かすべきだと思った。とにかく僕は今無性に眠いし、この場合僕には何の非もないことはよく分かっていた。だから僕は
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