朧月夜/千波 一也
 



水の匂いが燃えてゆく


漆黒は
うるおいのいろ

こぼれてはじまる
灯りにけむる、
波のいろ



疎遠になれない花の名に
ひれ伏すともなく
かしづく儀礼は、

いつかの川上

衣擦れを漕ぐ
ささやきの




面影がむすばれてゆく

一途に揺らぐ炎となって
重なることを
こいながら

涙、

線を越え
またひとつ
懐かしくなる







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