老詩人/楢山孝介
 
アルルの丘でゴッホとゴーギャンが相撲を取り
圧勝したゴーギャンが呵々大笑する
電車を待つ間、そんな詩を手帖に書いていた老詩人は
だんだんとゴッホが可哀想になってきたので
それまで書いてきた十四行に大きく×をつけた

プラットフォームに大量に並べられたベンチでは
酒を飲んだり反吐を吐いたり詩を書いたり
抱き合ったり小突きあったりしている人たちがいる
駅の清掃員たちはベンチを憎んでいる

老詩人が新たに書いた詩は
ゴッホとゴーギャンが将棋を指し
基本的なルールすら知らないゴーギャンに
ゴッホが大勝するという内容だった
老詩人はその上にも大きく×をつけた

片耳がよく聞
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