冷たい月/キメラ
何年たったのだろう。
そんなことはもうどうでもいい。玄関の鍵をあけ無言のままリビングへとすすむ。
「ただいま」…そこには誰もいない。かぜも吹き込まぬ蒸し暑い熱気には、
混沌としたカオスが渦巻いていた。
床に散らばったポルノ雑誌、喰いちらされた後のゴミが腐乱し、
退廃に打ち付けた日常の壁に刻む薄こげたような印象があふれていた。
コンビニに出掛けた男は、所謂、異常性癖者というもので、一般的世間でいうストレンジャーの類である。アパートから角を4つ曲ったところに立派な屋敷があり、その庭には大きなゴールデンレトリバーがつながれていた。男は何時間でもそれを眺めてはアパートにかえり、欲情のまま一
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