冬の終わり/頃日/結城 森士
 
「冬の終わり」

空から一滴の涙が流れる時
貴方は一本の露草を摘み取って優しく微笑んだ
水溜りに映った自分の姿に?
違う 貴方が愛でているのは
命を落とした亡骸だ
蒼白い花弁から一滴の血が流れる
貴方は気づかない

空から一滴の涙が流れる
冷たい風が吹く

貴方は冬が好きだと言った
春になると貴方は溶けてしまう
悲しい と言って貴方は泣いた
僕は貴方を捨てた
美しすぎたから

空から一滴の涙が流れる
雪が溶けて久しい

僕は貴方に夏が好きだと言った
貴方を傷つけたかった

雲の隙間から光が零れ落ちる

春になるとやがて溶けてしまう
貴方はそう
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