マグダレナ 〜渇いた女〜 /服部 剛
十字架のネックレスをした女は
今日も「通りゃんせ」の鳴る交差点を
紅いハイヒールで夜へと歩く
人知れぬ部屋で
男に接吻(くちづけ)られる
濡れた首すじに
垂らした十字架
( そこには
( 独りの痩せた男の姿が彫られ
( 両腕を広げうなだれたまま
( 力無くはりつけられていた
翌朝
男の姿が消えた部屋で
目を覚ました女
服を着て
ハンドバッグを手に
烏(からす)達の舞い降りる
路上へ出る
空腹をみたすパンを探して
ファーストフードの朝食
何ごともなかった顔で
紅茶を啜(すす)る
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