春にうまれたあなたのこと/藤丘 香子
 
ある日
贈り物をしようと出掛けた
セーターを買いに行き
サイズを聞かれた
わたしは答えられない

靴屋に行き
やはりサイズを聞かれ
答えられない

ネクタイを買いに行って
好みの色が分からない

何てこと
あなたのことをあまり
知らない

春にうまれたあなたに
贈り物をしたくて
秋の中をうろうろし
途方にくれて

繁華街にある小さな森のベンチに
うつむいて座っていると
寂しさがこみあげてきた

わたしは涙を認め
愛しいと想うことのはじまりを理解した
枯葉と秋桜の中で





わたしは何冊かの書物を読み
何本かの映画を観て音楽
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