長い坂道/川口 掌
カタカタカタカタ
歩き始めたばかりの幼児が手押し車を鳴らす
母親はその直ぐ後で
我が子を支える為の手を広げたまま
少し腰を屈め歩いていく
坂道に差し掛かりよたよたと
ふらつき出した母娘(おやこ)の脇を
なんと無く優しい気分になりながら
私は通り抜ける
坂道を中程まで登ると
何か急ぎの用事でもあるのか
早足で歩く中年の女性と
その少し先を
乳母車を押しながら
ゆっくり歩くお婆さんが見えてくる
中年の女性は
よっぽど先を急ぐのか
お婆さんには見向きもせず横を通り抜ける
しばらくして
私もお婆さんの横まで来て
乳母車の中を覗き込み
思わず声をかける
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