ラストシーン/んなこたーない
、この呪われた夜を祝福する。
一日12時間の労働。盲目の豚。足を踏み鳴らす。咽喉を掻き切る。
そして、ふいに泣き崩れるだろう。
<ああ、最後にこそ打ち鳴らされるべき、シンバルへの力強い一撃! >
3
墓地は港を見下ろすゆるやかな斜面にそって広がり、
視野は歪んだ水平線上で途絶えている。
この爽快な展望を前にして、どうして君は涙ぐむのか。
「もう君は、人の手を通じて物事を受け取ったり、
あるいは死者の眼を通して見たり、書物の亡霊を糧にしたりしてはいけない」
そうだ、いくつもの運命が、いくつもの顔の上を横切り、
こうしていくつもの墓碑銘の下、たったひとつの決着をつけるのだ。
花束のないラストシーン。雨の降らないエピローグ。
君とぼくの25年。あるいは、ぼくらの25年。
スーツの襟に花を挿し、敬礼の姿勢を保ちながら、
ひとり墓地に佇んだぼくは、そのときも<ラストシーン>について考えていた。
「頬の花束は船出する」
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