春/
蝶子
桜はあきないのだろうか
雪が溶ければ 蕾をふくらませ
陽が高く昇れば 花びらを脱ぎ散り
銀杏が黄金に染まれば そのおすそわけを頂戴し
人間がせわしなく動き始めると ペースを合わせて葉を手放していく
あきないのだろうか
この美しい単調に
この疑いの由もない繰り返しに
一度たりとも思わないのだろうか
こんなことをして何になるのか、と
私なら思ってしまう
ああ、そうか
だから私は人間なんだ
だから私は人間になってしまったんだ
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