クラインの壺/vallette
カチリ、と響く瞬間に、運命はようやく動き出した
銃口は冷たく、滲み出る汗はさらに冷たかった
明日はもう戻ってこないのだと
初めて気が付いた
運命の歯車が私を探している
私は最後のピース
私がはまれば今日が動く、明日が来る
私の中に何があるの?
あなたに私はどう見えてるの?
私は「心がある」って言いたいよ
でもそれは嘘
私が私でいられるための嘘
でなければ、私はきっと歯車になる
気付けば私の手は鉄みたいだった
ゆっくりと私が変わっていく
私だったものが消えていく
「そんなのやだよ。」
だから私を殺して、そう言ったはずなのに
銃口は下げられる
愛するあなたの手によって
こうして私は歯車になる
明日と今日をつなぐ、歯車に
最後に見えたあなたの涙は
鉄になった私を溶かしてはくれなかった
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