法一/唯川
 
耳鳴りがする
ざざあ、ざあざあ

蝙蝠の日常へと
僕は誰にも視えない
夜と平行に砂浜を歩く
埋もれたかかとに被さる幻滅
底、がないのは右一里と同じこと
逆立つ産毛の感覚を
今はまだ捨てることあたわず
ひたすら、に唱え続ける唄は雨乞いにも似る

いつからか騒乱の静寂
かたい小枝を踏む、折れてしまう
切れる肌
ここに痛み、あるまじ

ざざあ、ざあざあ
波が泡立ちながら
こちらへと
僕は誰にも視えない、のに
盲目を呼んでいる

こだまする、ぼくの、こえ
ざざあ、ざあざあ
やむことのない、それ

飛沫が、

酷く耳鳴りが恋しくなったが
僕にはもう、耳がない

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