世界の車窓から/大覚アキラ
 
消防車と救急車とパトカー およそすべてのサイレンの付いた乗り
物が ひどくゆっくりと南に向かって走っていく ぼくはそのあと
を野良犬のように追いかけながら交差点に差し掛かるたびマラソン
のゴールの瞬間を演じるのだ 感動の涙を流しながら そして口か
らは何度も何度も呪いの言葉を吐きつづける 牙を剥いて獣の言葉
で呪いをかける シャネルのショーウインドウの前で 襤褸切れみ
たいになったホームレスの老人が横たわっている その傍らを足早
に通り過ぎる女子高生は 凶器になりそうなほど長い睫毛を風にな
びかせながら ケータイのメールを猛スピードで入力している そ
のすぐ後ろから両手にショッピ
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