回廊/アンテ
ようにこんがらがった
物事や気持ちを
いとも容易く解きほぐして
ほらね と差し出してくれる
とても手際よく
とても自然に
わたしの記憶に触れる手の
繊細な動きを見ているのが好きで
別の生き物みたい
って言うと
カナコさんは本当に嬉しそうにうなずいて
わたしの頭を撫でてくれる
部屋というよりも
長い長い回廊だ
無数の扉が壁にならんでいて
試しにノブを掴んでみても
どれも鍵がかかっていて開かない
扉にはそれぞれ小窓があって
覗き見ると
どの窓の向こうにもわたしが一人いて
友達や家族や知らない人たちと一緒だ
どのわ
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