表裏/たのうち
 
引越しの前日
大きな箱でいっぱいの彼の部屋で

「お前がいなくなったら、俺は自分の半分を失っちまう」
と、彼が言いました。
わたしも同じ気持ちだったので
「わたしもよ」
と答えました。

内心では
「半身の方が身軽で楽よ」
と思っていたけど。


そして手をつないで…


「どんなにたくさん友達がいても、お前がいないと俺は孤独だ」
と、彼が言いました。
わたしはその言葉が素直にうれしかったので
「ほんとう?」
とほほえみました。

内心では
「彼は一体、わたしの友達何人分の価値だろう」
と計算していたけど。


そして彼の手がわたしの背にまわり…


「孤独は恐怖だな」
と、彼が言いました。
わたしはそれをもう一度頭の中で繰り返し
「・・・」
無言で彼を見つめていました。

内心では
「孤独は自由よ」
と確信していたけど。


そして、キス。
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