夢 〜赤ちゃんの国〜 /服部 剛
朝起きたら
いつも台所に立つ母が
地を這う赤ちゃんになっていた
家を出て
電車を待つ駅のホームには
はいはいのまま赤ちゃん達が並び
全ての席は座る赤ちゃんに埋め尽くされ
無邪気に笑ったり
孤児(みなしご)のまま泣いたり
していた
職場の老人ホームの門をくぐると
走って来たワゴン車の運転席は
ハンドルから手を離したまま
シートベルトをした
赤ちゃんだった
後ろに乗った
車椅子に座るのも
赤ちゃんだった
( いまごろせかいじゅうで
( どれほどのうぶごえが
( だいがっしょうをして
( このちきゅうを
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