夢 〜赤ちゃんの国〜 /服部 剛
 
朝起きたら 
いつも台所に立つ母が 
地を這う赤ちゃんになっていた 

家を出て 
電車を待つ駅のホームには 
はいはいのまま赤ちゃん達が並び 
全ての席は座る赤ちゃんに埋め尽くされ 
無邪気に笑ったり 
孤児(みなしご)のまま泣いたり 
していた 

職場の老人ホームの門をくぐると 
走って来たワゴン車の運転席は 
ハンドルから手を離したまま 
シートベルトをした
赤ちゃんだった 

後ろに乗った
車椅子に座るのも 
赤ちゃんだった 

( いまごろせかいじゅうで 
( どれほどのうぶごえが 
( だいがっしょうをして 
( このちきゅうを
[次のページ]
戻る   Point(8)