雲の輪 /服部 剛
 
小学生の 
ガキ大将が子分に肩を組み 
「 お前はまだ0(ゼロ)人前だ 」 
と言いながら 
目の前を通り過ぎていった 

大人になっても0人前のわたしは 
誰に肩を組まれるでもなく 
誰の肩を組むでもなく 
( 何処(どこ)でもない場所 )に立ち止まり 
只(ただ) なにもない空を見上げる 


 空に流れる雲 
 形を崩し 
 0の輪になった 


空の上に住むひとは 
時々
雲の輪から地上を覗く 

半分欠けたまま彷徨(さまよ)う心たち 
お互いを組み合わせるとハート型になる 
もう半分の欠けた心を探して 
今日も人々は街をゆき交う 

わたしの 
心の入り口にも
雲の輪 

吹き込む不思議な風にみたされて 

今日という日 
へと 

入ってゆく 







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