『心室細動』/しろいぬ
 
真っ暗闇の部屋で

明かりをひとつ灯しました

左胸にぽつりと

心臓を燃やす朱

上大静脈の先端を、僅かに焦がして

夢と呼ぶにはまだ早く

意志と呼ぶにはまだ遠く

でも確かな熱で


真っ暗闇の部屋で

明かりをひとつ灯しました

左胸にぽつりと

心臓を燃やす朱

右心室の奥でちろちろと

覚悟と呼ぶにはまだ温く

決意と呼ぶにはまだ幼い

でも確かに在る


何を想い何を歌うの

或は何を見て何を叫ぶ


左心室から大動脈弁をぶっ飛ばして

三又の管に火よ通え

夢と呼んで、意志と呼んで、覚悟と呼んで、決意と呼んで相応しいものを点せ

躊躇いなく生命を燃やして全身を駆け

細に渡る管を全て焼き

ひとつの道を抜けろ


真っ暗闇の部屋で

光をひとつ掴みました

左胸に煌々と

心臓に宿す朱

大動脈を裂いて加速する

確かな熱

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