はれときどきみぞれ/
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みぞれがぴしゃぴしゃと眼鏡にはりついてくる
3月のそれは忘れてくれといわんばかりに
一刻もたたず跡すら残さないで消えた
植物も物思ことがあるとすれば
この気の早い桜はさぞかし不安だったろう
「咲く時期を間違えたのかしらん」
だんまりを決め込んだ早春の空には
パイプオルガンの音が響き渡り
なにかとの別れとなにかとの出会いを
少し不気味に演出しつづけていた
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