詩友への手紙 〜新宿にて〜 /
服部 剛
の内にいる「透明な猫」の寂しい
泣き声を、確かに聞いた。
地下の狭い個室の塒で眠りにつき、目が覚めた僕は地上に出ると
一本の木が冷たい風に耐えながら、揺れる無数の葉を鏡にして朝日
を反射させていた。果てなく広がる空の下に投げ出された僕は、寂
しく胸に空いた穴に手をあてながら、あの一本の木のように立つ者
となれるかと問いながら、朝の新宿に舞い降りる烏の群を横切り、
まだ人もまばらな新宿駅の大きい階段へと歩いた。
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