「 窓辺の日射し 」 /服部 剛
 
ひとりの部屋で 
哀しい唄を聞きながら 
歌詞を机にひろげて読んでいると 
窓からゆっくり日は射して 
机を覆う影は 
波のようにひいてゆく 


  * 


窓の外を見ると 
鞄を背負い
立ち止まる旅人  
川の畔(ほとり)に重荷を降ろし 
膝を抱え 
叢(くさむら)に戯(たわむれ)れる 
二羽の蝶々を眺めている 

川面(かわも)は 
春風に散る 
桜吹雪 

ふたたび 
鞄を背負い 
立ち上がる旅人 
淡い夢を失えぬまま 
名も無い季節へと 
歩き出す 


  * 


ひとりの部屋に 
流れて
[次のページ]
戻る   Point(7)