創書日和「歌」 予感/北野つづみ
 
音になるまえの おと
歌になるまえの うた
暗く静かな時空の中に
君の居場所は
きっとあった

生まれたばかりの かぜ
一番最初の なみ
弾かれるための弦のように
始まりの場所は
きっとあった

朝顔の小さい 黒い種の中に
隠されていた鮮やかな 青

夏の大潮の日に引き潮を待って
海を走っていく 雄花

ただ一日のために確かに存在した
何物でもない時間

海が花で白くなる
(そして雌花と出会うでしょう)

指になるまえの ゆび
まだ眼ではない め

この瞬間に打ち始める鼓動の
ゆるやかに広がっていく波動
これから創られていく 新しい歌が
わたしの中に
きっとあるはず


二〇〇七年三月十六日


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