皆殺しのための100行/大覚アキラ
のことをお父さんと呼ぶおまえも決して私の娘ではない
そしてここにいる私たちの息子は
こんな状況をただ眺めながら
写生でもするように詩を書いているのだよ
どうだ不自然だろう
その不自然さはすべて言葉のせいだ
結局すべては言葉の問題なんだ
誰かが適当に作り出した言葉によって
意味を与えられた世界に我々は生きているわけで
どんなに足掻いたところで
言葉の壁を乗り越えることはできないだろう
そういうことだよ
なあ母さん
とにかくその刃渡り30センチの出刃包丁をしまいなさい
お父さん
あなたは一体
何を言っているのですか
私たちは同じリングの上に立っているのですよお父さん
母は晴れやかな笑みを浮かべながら
刃渡り30センチの出刃包丁を振り下ろした
そうだ
無からすべてが始まったというのは真っ赤な嘘で
始まりなんてそもそもなかったのだろう
すべては元々そこにあったに違いない
畳の上にだらしなく横たわった父の体から流れ出る
真っ赤な血を眺めながら
そう思った
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